ベトナムにおけるM&Aの種類

ベトナムでのM&Aは「資産譲渡」と「株式譲渡」という2つのスキームで実行される。
各スキームにおいて、メリットとデメリットが存在するため、M&Aを検討する投資家は自身の資金力、交渉力、手続きなどの諸条件を考慮し、最適なM&Aスキームを選択する必要がある。
ベトナムでの2つのM&Aスキームについて解説する。
目次
資産譲渡
資産譲渡とは、投資家が対象会社の資産の全部または一部を取得することであり、資産が譲渡されると同時に会社の所有権も移転される。
メリット
資産譲渡を実施する場合、購入者は一つ一つの資産や負債を精査し、買収価格を算定する。そのため、不良在庫や隠れた負債等の予期しないリスクを回避することができる。
また、会社買収にあたって複数の株主と別々に交渉する必要がなく、買収したい会社の経営陣・代表者のみとの交渉でM&Aを進めることができることも大きな利点である。
デメリット
資産や負債の精査に多くの時間・労力・費用がかかり、M&Aの進行スピードは株式譲渡と比較すると遅くなる。またそれに伴い、法律上の手続きが複雑になる可能性がある。
株式譲渡
株式譲渡とは、投資家がある会社の発行した株式の多数または全部を買い戻し、その会社の筆頭株主になるという形である。
メリット
買収した会社の株式のみを購入することにより、買収した企業のバランスシートをそのまま引き継ぐことになり、よりシンプルな流れとなる。また、資産譲渡に比べて資産価値評価等の煩雑な手続きが少ないため、スムーズかつ短時間でM&Aを進めることができる。
デメリット
株式譲渡にあたって資産・負債の精査などが行われないため、買収後に予期しないリスクに直面する可能性がある。また、株式が複数の株主によって保有されている場合、各株主と別々に交渉を進めていく必要がある。

最後に
ベトナムでのM&A手法の選択は、投資戦略や目的、さらには対象企業の現状など、多岐にわたる要因を考慮する必要がある。資産譲渡はより細かいコントロールが可能でリスク回避に有効であるが、手続きには時間がかかる。一方、株式譲渡は迅速な手続きが可能だが、潜在的なリスクを内包する可能性がある。したがって、M&Aを検討する際には、専門家の意見を参考にしつつ、慎重に手法を選択することが推奨される。