【ベトナムM&A:食品卸業界動向】M&Aによるベトナム市場進出のチャンス 

はじめに 

ベトナム経済の急速な発展や人口増加に伴い、食品業界の市場規模は拡大している。 

特に食品卸業界は日本企業にとって注目の分野となっており、M&Aを通じて現地企業と連携することで、短期間で市場に参入できる。 

本記事では、ベトナムの食品卸業界におけるM&Aの動向と、企業がそのチャンスをどのように活用できるかについて紹介する。 

食品卸業界の市場動向 

ベトナムの食品業界は近年急成長しており、特に都市部では購買力が増加している。 

消費者の嗜好も多様化し、新たな食品カテゴリーの需要が高まっている。 

さらに、Statistaの予測によれば、2023年のベトナム食品市場は96,47Bil USDに達し、2022年比で9%の成長が見込まれている。 

加えて、2023年から2027年にかけての年間平均成長率は8. 22%と予測される。 

若年層の増加とともに、健康志向や新しい食文化への関心が高まっており、これに応じた商品やサービスが求められているため、現地企業は既存の供給網を拡充し、新たな販路の開拓を進める必要がある。 

なお、東南アジア地域内で比較すると、2023年のベトナム食品業界の売上高は、インドネシアやフィリピンに次いで第3位となる見込みである。 

政府の政策支援や、若年層を中心とする消費者層の拡大、そして中間層の所得向上が、業界の発展を強力に後押ししている状況である。 

これにより、従来の販路に加えて、食品卸業者が新たなビジネスチャンスを掴むための革新的な流通ネットワークの構築が進んでおり、今後も持続的な成長が期待される。 

食品卸業界のM&A動向 

近年、ベトナムの食品卸業界ではM&Aが活発になっている。 

多くの日本企業が現地の食品卸業者との提携を目指しており、迅速に市場に参入し、現地のネットワークを活用するためにM&Aが有効な手段となっている。 

特に、既存の顧客基盤や流通ネットワークを活用することができるため、競争優位性を確保するためにM&Aが積極的に行われている。 

多くの投資家にとって、M&Aはベトナム市場に参入し、事業を拡大するための最も効果的な手段の一つと見なされている。 

近年、ベトナムで成立したM&A取引の件数と取引価値は持続的に成長しており、今後もこの傾向は続くと予測されている。 

さらに、ベトナム‐EU自由貿易協定(EVFTA)の発効により、M&Aはさらに加速し、多くの新たなビジネスチャンスが生まれると期待される。 

食品卸業界におけるM&Aのメリット 

迅速な市場参入 

日本企業が自社で新たに販路を開拓する場合、多くの時間とコストが必要となり、市場調査や現地企業との信頼関係構築に大きな労力を要する。 

しかし、現地の食品卸企業とのM&Aを実施することで、すでに確立された流通ネットワークや顧客基盤をそのまま活用することが可能となり、短期間で市場に参入できる。 

これにより、市場環境に迅速に対応し、競争優位を築くための初動が大きく改善される。 

業務効率の向上 

M&Aにより、日本企業は現地企業の物流システム、在庫管理、供給チェーンの運用ノウハウを取り込むことができ、規模の経済を享受できる。 

これにより、個別にシステムを構築する場合と比べて、運営コストの削減や業務プロセスの効率化が実現され、全体の業務効率が大幅に向上する。 

また、現地の市場動向や消費者ニーズに即応した柔軟な運営体制を構築できる点も大きなメリットである。 

新市場へのアクセス 

ベトナム市場は、急速な経済成長と都市化の進展に伴い、多様な消費者層が形成されている。 

特に、若年層や健康志向の消費者層は新たな需要を創出して、これに対応した商品やサービスが求められている。 

M&Aを通じて現地企業と連携することで、これまで日本企業が自力で構築するのが困難であった既存の流通チャネルや販売ネットワークに直接アクセスでき、新市場への迅速な展開が可能となる。 

これにより、ターゲット市場に合わせた商品展開が効率的に進められるとともに、新たな収益源の創出が期待される。 

食品卸業界のM&A事例 

事例1:CJグループによる現地食品企業への投資 

韓国の大手食品企業であるCJグループは、ベトナム市場進出のため、以下の2件のM&A取引を実施した。 

「Cau Tre Export Goods Processing JSC」の47.33%の株式を買収(2017年1月) 
「Minh Dat Foods Company Limited」の65%の株式を取得(2017年4月) 

これにより、CJグループは既存の流通ネットワークと販路を獲得し、現地市場への迅速な参入とシェア拡大を実現している。 

CJフーズの製品は、地元企業を買収した後、非常に多様で地域文化に適している。 

出所:https://cjfoods.com.vn/products 

事例2Daesang Corpによる完全買収 

2017年初頭、韓国の大手食品企業Daesang Corpは、ベトナムの成長市場に対応するため、「Duc Viet Food Joint Stock Company」の全株式(100%)を買収した。 
この完全買収により、Daesang Corpは現地でのブランド力強化や供給チェーンの充実を図り、競争力を大幅に向上させることに成功した。 

Duc Vietを買収した後、DaesangはDuc Vietが持つ大手スーパーのチェーンでの広範な販売チャネルを活用した。 

出所:https://baodautu.vn/xuc-xich-duc-viet-vao-tay-ong-chu-han-quoc-thi-truong-day-song-d49725.html 

代表的な食品卸会社の例 

Vissan Joint Stock Company 

Vissan Joint Stock Company (VISSAN)は 1970 年に設立された。現在、VISSAN の製品には生鮮食品と加工食品の 2 つの主要なセグメントがある。 生鮮食品グループには、豚肉と牛肉が含まれる。 VISSANの加工食品グループには、乾燥加工食品と冷蔵加工食品の2つの主要製品ラインがある。 品質と食品の安全性によって市場にアプローチするという戦略的方向性により、VISSAN は生産から加工、流通までのクローズド プロセスを実施してきた。 

VISSANの流通システム 

出所:https://www.vissan.com.vn/he-thong-phan-phoi/he-thong-phan-phoi-trong-nuoc/

AKURUHI GROUP 

AKURUHIは、日本の食品をベトナム市場に供給するための総合プラットフォームを提供しており、スーパーマーケット、コンビニ、レストランチェーン、ホテル業界など、さまざまな業態の顧客に向けた卸売・小売のネットワークを構築している。また、自社で日本食品専門のスーパーマーケットやレストランチェーンを展開し、日本の食文化をベトナムに根付かせることにも貢献している。 

Akuruhiの食品ECサイト 

出所:https://akuruhifood.com/

さいごに 

ベトナム市場は急速に成長する食品業界において、多くのビジネスチャンスを提供している。 
M&Aを活用することで、日本企業は現地市場への参入を迅速かつ効率的に進めることができ、今後の成長を加速させることができる。 

他方で、食品卸企業とのM&Aにおいては、取扱商品や取引先など、いかに自社のニーズと合致した企業に出会えるかが、重要なポイントとなる。 

弊社では、ベトナム現地に幅広くコネクションがあるため、日本企業の希望に沿った案件の紹介が可能である。 

M&Aに関心がある方は、ぜひ弊社にお問い合わせいただきたい。