【M&A徹底解説】ベトナム病院市場のM&A動向と成功戦略

目次
はじめに
ベトナムの医療市場は、急速に成長しており、特に民間病院の発展が顕著である。経済成長とともに、中間層や富裕層が増加し、健康意識の向上とともに、医療サービスへの需要が急増している。
そのため、病院市場におけるM&A(合併・買収)が活発化し、市場参入や事業拡大の手段として注目を集めている。
本記事では、ベトナム病院市場におけるM&Aの現状、成功戦略、そして課題について徹底解説する。
病院の市場動向
ベトナムの医療市場は急速に成長しており、特に民間病院の発展が目覚ましい。
経済成長や都市化の進展により、中間層や富裕層が増加し、健康意識の向上が市場の拡大を促進している。
さらに、政府の医療改革が進む中で、民間医療の役割が一層重要となっている。
ベトナム医療需要の増加
ベトナムの人口は約1億人で、毎年増加する傾向がある。
特に高齢化の進行とともに、慢性疾患や生活習慣病の患者が増加しており、医療サービスへの支出が増えている。
しかし、公立病院だけではその需要に対応しきれず、民間病院の重要性が増している。
これにより、民間病院の発展と、M&Aによる市場参入が加速している。
公立病院と民間病院
公立病院は、医療費が低価格であるため、一般市民にとってアクセスしやすい。
しかし、設備やサービス面では限界があり、特に都市部の大病院では混雑や待機時間が長く、患者の満足度が低いことが課題である。
さらに、医療の質や最新の医療技術に関しても、民間病院に比べて遅れが見られることが多い。

一方、民間病院は、より高度な医療サービスを提供しており、特に外国人や富裕層をターゲットにした病院が増加している。
これらの病院は、質の高い医療技術と設備を備え、快適な環境での治療を提供することが特徴である。さらに、海外からの医療ツーリズムにも対応し、競争力を高めるために、患者にとっての利便性やサービスの質をさらに向上させる必要がある。
このため、民間病院は医療技術やサービスの向上を目指して、M&Aを通じて規模の拡大を図っている。
外資の参入が進む
ベトナム政府は外資の医療参入を推進しているが、外資100%の病院設立には依然として制約がある。
そこで、外資系企業によるM&Aが有力な参入手段として注目されている。
具体的には、現在のWTOにおける条約に基づき、外国のサービス提供者は、100%外国資本の病院を設立すること、ベトナムのパートナーと共同事業を行うこと、または業務提携契約を通じてサービスを提供することができる。特に、シンガポール、日本、韓国系の病院がベトナム市場に進出し、業界の競争が激化している。
病院のM&A動向
ベトナムの病院M&A市場は活発化しており、特に民間病院の買収・統合が進んでいる。
国内資本による病院統合
ベトナム国内の医療グループは、中小規模の病院を買収し、チェーン展開を進めている。
この動きは、規模の拡大やサービスの均一化を目的としており、特に大都市圏で新たな患者層を獲得するために、既存の病院との統合が進んでいる。
外資系企業による参入
日本、韓国、シンガポールなどの企業は、ベトナムの既存の民間病院を買収し、市場に参入している。
これらの企業は、高度な医療技術やマネジメント経験を持ち込み、現地の医療環境の改善に貢献している。
外国企業の参入は、患者の信頼性向上や医療の質向上を期待されており、今後もM&Aは活発に続くと予測されている。
政府の医療改革
ベトナム政府は、国公立病院の民営化を進めており、民間資本が病院運営に参画しやすくなっている。
この政策により、民間企業は公共病院を買収したり、運営に参加したりすることができるようになっている。
政府は、民営化を進めることで、医療インフラの改善やサービスの質向上を目指しており、このような変化はM&Aを通じて加速している。
民営化された病院は、柔軟な経営が可能となり、経営の効率化が進むだけでなく、患者に対する迅速かつ質の高い医療サービスを提供できるようになっている。
病院におけるM&Aの課題・リスク
法規制のリスク
外資系企業が100%の病院を運営するには依然として制限があり、現地企業との合弁やM&Aが不可欠となる。
また、政府の医療政策の変更により、長期的なビジネスの不確実性が存在している。
文化・経営の違い
日本の医療スタイルとベトナムの医療慣習には違いがあり、現地スタッフとの意識のギャップが生じる可能性があるため、買収後の経営統合(PMI:Post-Merger Integration)が成功するかどうかが、M&Aの成否を分けるポイントである。
人材の確保と定着
人材管理においては、優秀な医師や看護師の確保が課題となる。
M&A後に医療スタッフが流出すると、経営に大きな影響を与える可能性がある。
人事DD(デューデリジェンス)を通じた人材精査や、PMIにおける人材育成の仕組み構築が必要である。
既存患者の信頼維持
M&Aによって病院の運営方針が変わると、既存の患者が離れるリスクがある。特にブランドやサービスの変更は慎重に行う必要がある。
病院におけるM&Aのメリット
迅速な市場参入
新規開業と比較して、M&Aによる参入は迅速だ。
既存の設備や許認可、医療スタッフ、患者基盤をそのまま活用できるため、早期に事業を開始できる。
既存のブランド・患者ネットワークの活用
信頼のある病院を買収すれば、既存の患者ネットワークを活用でき、時間とコストを削減できる。口コミや紹介ネットワークも有効に活用可能となる。
経営の効率化(スケールメリット)
病院のグループ経営により、コスト削減や経営効率化が実現できる。
例えば、医薬品の仕入れやITシステムの統合により、経営ノウハウを活かせるようになる。
規制対応のリスク軽減
新規参入に比べ、既存病院の枠組みを活用することで、規制対応がスムーズに進む。
また、現地パートナーを得ることで、政府との関係構築も容易になる。
ベトナムにおける病院のM&A事例
FV病院の買収
2023年、シンガポールのThomson Medical Group(TMG)は、FV病院の100%の株式を381 Mil USDで買収した。
この病院は、ベトナムで高品質な医療サービスを提供する施設であり、特に外国人や富裕層に対応する。TMGは、この買収を通じてベトナム市場における存在感を強化し、急成長する医療市場を活用することを目指している。
また、この買収により、TMGはベトナム国内での医療ネットワークを拡大し、事業を拡張している。
FV病院の先進的な医療技術と優れたサービスは、TMGにとって大きな資産となる。

FV病院がThomson Medical Group(シンガポール)の一員となることを発表する式典
Link:https://thanhnien.vn/tap-doan-y-te-thomson-mua-benh-vien-fv-185240117151715726.htm
American International Hospital(AIH)との戦略的提携
シンガポールのRaffles Medical(RMG)は、ホーチミン市のAmerican International Hospital(AIH)との戦略的提携を発表した。
この提携により、RMGはAIHの運営管理に参画し、特にがん治療や外科手術などの専門分野を強化する予定である。
AIHは先進的な医療設備と経験豊富な医師を有しており、RMGはこれらを活用して医療サービスの質を向上させる。
RMGはまた、AIHの親会社の商業運営を買収する計画を発表し、AIHの評価額は45.6 Mil USDである。
これにより、RMGはベトナム市場での競争力を強化し、医療ツーリズム分野での成長を目指す。
AIHは2018年に開業し、現在120床の病床と約500人のスタッフを有している。
この提携は、両者にとってWin-Winの関係を築くことができる。

ベトナムにおける主要病院の例
Vinmec病院
Vinmec病院は、Vingroupグループに属する病院チェーンで、ベトナム国内で高品質な医療サービスを提供している。
最新の医療技術を駆使し、専門的な医師チームが揃っている。
Vinmecは、ハノイ、ホーチミン市、その他の主要都市に展開しており、国内外の患者に対応している。

Link:https://www.vinmec.com/vie/
Thu Cuc International General Hospital
Thu Cuc病院は、ハノイにある大手民間病院で、総合的な健康診断、外科手術、専門的な医療サービスなど、多様な医療サービスを提供している。
当病院は、先進的な医療技術を導入し、患者のケアを重視している。

Link:https://benhvienthucuc.vn/thu-vien-hinh-anh/
さいごに
規制が多い医療・病院業界において、ローカル企業とのM&Aは効果的な市場進出の手段となる。
M&Aを通じて、既存のブランド力や優れた人材を活かして、競争力を高めることができる。
病院経営では、患者からの信頼を得るために、良質な医療サービスを提供する企業との連携が非常に重要である。
一方、病院のM&Aには法規制、文化・経営の違い、人材の確保、既存患者の信頼維持など多くの課題が伴うが、これらのリスクを最小化するためには、専門的な知識と経験が求められる。
ONE-VALUEは、ベトナムと日本を繋ぐM&Aのコンサルティング会社として、リスクを適切に管理し、スムーズな統合を実現するための支援を提供します。
信頼できるパートナーとして、日本企業様のM&Aを成功に導きますので、ぜひご相談ください。
以上