ベトナム進出戦略に必須の市場調査と計画
目次
はじめに
ベトナムは高い経済成長率と豊富な労働力を背景に、日本企業を含む多くの外国企業から注目を集めています。しかし、進出を検討するにあたり「どのように市場調査を行い、どのように事業計画を立てるか」は、多くの企業にとって大きな課題です。
成功する企業は例外なく、進出前にマクロ・ミクロ両面から市場調査を行い、具体的な事業計画を策定しています。また、売上や利益目標を定量的に管理できるKPIの設計、投資回収を見据えたシミュレーションも欠かせません。
本稿では、ベトナム進出戦略の立案における市場調査と事業計画づくりの要点を解説します。
ベトナム市場調査の重要性と進め方
1. マクロ調査
マクロ調査とは、国全体や産業全体の動向を把握する調査です。
・経済成長率や人口動態
・政府の産業政策や規制環境
・他国からの直接投資(FDI)の動向
これにより「ベトナム市場が今後どの程度成長するか」を予測できます。
2. ミクロ調査
ミクロ調査とは、ターゲット業界や顧客に焦点を当てた調査です。
・競合企業のシェアや強み・弱み
・消費者の購買行動や嗜好
・流通チャネルや価格帯の分析
これにより「進出後に競合とどう戦うか」を明確にできます。
ベトナム事業計画の立て方
1. 戦略の明確化
市場調査で得られた情報をもとに、「どの市場で、どの顧客層に、どの製品やサービスを提供するのか」を明確にします。
2. 実行計画の策定
・参入スキーム(新設投資、M&A、アライアンス)
・販売戦略(チャネル選定、価格設定)
・組織体制(現地法人設立、駐在員派遣、現地採用)
3. 財務シミュレーション
売上・費用・利益の予測を立て、初期投資をどの期間で回収するかをシミュレーションします。
KPI設計と投資回収モデル
KPI設計
KPIとは、目標達成に向けて定量的に管理する指標のことです。
・売上高や利益率
・新規顧客獲得数
・店舗数や稼働率
これらを設定することで、進出後の進捗を定量的に把握できます。
投資回収モデル
投資回収モデルでは「初期投資額」「年間キャッシュフロー」「回収期間」を試算します。
・初期投資:設備投資、立ち上げ費用、人件費
・回収シナリオ:楽観・中位・悲観の3パターンを作成
これによりリスクを踏まえた投資判断が可能になります。
ベトナム市場調査・事業計画における課題
統計データが更新されていない、または正確性に欠ける場合がある。
消費者調査では都市部と地方で嗜好に差が大きく、調査設計が難しい。
KPIや投資回収シミュレーションは予測の要素が強く、不確実性を完全には排除できない。
ベトナムでの想定ケース
製造業企業A社(仮)
マクロ調査で工業団地の拡張計画を把握し、新工場設立を決定。人口動態を踏まえた労働力確保にも成功。
小売業企業B社(仮)
ミクロ調査で都市部の若年層消費者を分析し、適正価格帯を設定。出店戦略を成功させた。
サービス業企業C社(仮)
投資回収モデルを慎重に設計し、3年で黒字化達成。複数シナリオでの試算が経営判断の支えとなった。
ベトナム進出調査と計画立案の教訓
マクロ調査で「市場全体の魅力」を、ミクロ調査で「競争環境」を把握することが重要。
KPIを設定することで、進出後の進捗を数値で管理できる。
投資回収モデルを複数シナリオで検討することで、不確実性に対応できる。
さいごに
ベトナム市場は魅力的な投資先である一方、進出には慎重な準備が求められます。マクロ・ミクロ両面での市場調査を行い、その結果をもとに事業計画を立案することが成功の第一歩です。さらに、KPIの設計や投資回収モデルを導入することで、進出後の成果を管理し、計画的に投資を回収することが可能になります。
現地特有の課題に対応するためには、統計や調査データに加え、現場に即した情報や専門家の助言を活用することが不可欠です。入念な調査と戦略的な計画策定により、ベトナム進出の成功可能性は大きく高まるでしょう。