ベトナムおけるM&A【入門編】

ベトナム市場に進出する際の主要な手段として、M&A(合併および買収)が注目されている。本記事ではベトナムでのM&A概況、ベトナムM&Aの最新動向を網羅的に解説する。
目次
ベトナムでのM&A概況
日本企業によるベトナムでのM&Aは新型コロナ発生以降も活発になっている。ベトナムのM&A取引件数は、コロナ禍の影響によって減少した。一方で取引金額については、年々増加し続けている。これは大型取引が増加した結果であり、ベトナム市場は活発に動いていると言える。
近年のベトナムでは特に、外国の大手企業がベトナム企業をM&A(買収・合併)又は出資を行い、ベトナム市場に参入するというケースが非常に増加している。日本企業によるM&Aを用いたベトナム市場の参入事例も増えている。
ベトナムM&Aの最新動向
ベトナムは、東南アジアでM&Aが活発な国の一つである。シンガポールに次いで、東南アジアで2番目に多いM&A案件数と取引金額を誇る。これまでのベトナムでのM&A取引では、売り手はベトナム国内企業、買い手は主に外国企業で、外国直接投資によって実施されたものだった。
しかし、近年のベトナム経済の発展によりベトナム国内の企業同士によるM&A取引も増えており、ベトナムのM&A市場は以前より活発になっており、2023年10月末までにベトナムのM&A市場取引総額は44米億ドルに達している。
ベトナムM&A市場は今後も成長を続け、多くの企業にとって重要な役割を担うと考えられる。2024年の成長要因として、安定した経済成長、政治的安定、貿易協定により、外国直接投資(FDI)の流入が増加すると予想される。さらに、インフレ率が4%以下に抑えられており、国際通貨基金(IMF)によると2024年にはGDP成長率5.8%に、2025年には6.9%に回復する見込みである。公共債務もGDPの60%を下回るなど、ベトナムの経済基盤は投資家にとって魅力である。
ベトナムへの外国直接投資の動向
ベトナムへの外国直接投資(FDI)は、ベトナムが2007年に世界貿易機構(WTO)に加盟して以来、大きく増加している。特に社会主義的経済から開かれた自由な投資環境への変遷、国際的経済枠組みへの参加、そして世界い基準の国内法規定の整備を経て、ベトナムは外国人投資家にとってより魅力的な投資先となっている。
計画投資省(MPI)の統計では、2023年11月時点でベトナムへの外国投資総額は約280億米ドルに達し、前年比で14.8%増加した。特に、資本拠出や株式購入を通じた投資は約60億ドルに達し、前年比で46.4%増加している。外国投資が大幅に増加している傾向にあり、これらが全体に占める割合はますます大きくなっている。
セクター別のベトナムへの直接投資
対ベトナム直接投資をセクター別に見ると、製造業、不動産業、金融といったセクターへの投資が活発である。その中でも製造業がトップであり、約188億米ドルに達し登録投資総額の約73.1%を占め、同期間で45.8%増加した。次に不動産業の約21億米ドルで、全体の8.3%を占めて2位に位置する。3位以下には、金融、卸売である。
最後に
ベトナムのM&A市場は、外国投資家や日本企業にとって大きな機会を提供している。
市場の活性化、外資規制の緩和、経済基盤の強化など、ベトナムM&A市場の将来性は非常に明るい。ベトナムでのM&Aを成功させるためには、市場の最新動向を理解し、適切な戦略を立てることが重要である。