ベトナム包装業界の最新動向とM&Aのチャンスを徹底解説 

はじめに 

ベトナムの包装業界は現在、急速な成長を遂げており、食品、飲料、医薬品、電子商取引などの他の産業を支援する重要な分野の一つだ。人口は1億人以上、都市化の進展も急速であり、高品質な包装材に対する需要が増加している。同時に、ベトナム政府は産業の「グリーン化」を推進しており、特に使い捨てプラスチックの制限や環境に優しい包装材の使用促進に関する規制を強化している。このような背景の中で、先進的な技術と持続可能な包装製造の経験を持つ日本企業は、ベトナム市場でのM&A(買収・合併)活動を通じて大きなチャンスを見出すことができる。 

この記事では、ベトナムの包装業界の現在の動向、M&Aの機会、実際の事例、M&Aの利点、実施プロセスについて深く分析する。日本からの投資家や業界企業が、この有望な市場の潜在能力を最大限に活用できるよう、包括的な視点を提供することを目的としている。 

「包装業界」とは 

包装業界の種類・定義 

包装業界は、商品を収納、保護、輸送、宣伝するための製品を製造・供給する分野である。包装は単なる保護のための外装にとどまらず、マーケティング戦略において重要な役割を果たし、製品の価値を高め、消費者の利便性、美しさ、持続可能性に対する高まる要求に応える。 

ベトナムでは、包装業界は素材や用途に基づいて以下の主要なセグメントに分けられる。 

プラスチック包装:最も多くの企業が属しており(ベトナムの包装業界企業の約65%)、柔軟性、低コスト、そして食品、飲料、化粧品、医療分野での広範な利用可能性により市場を占めている。 
紙・段ボール包装:電子商取引の急成長とリサイクル素材の使用トレンドにより、急速に成長している。 
金属包装:主に高級食品や飲料業界で使用されており、耐久性とリサイクルの容易さが特徴。 
環境に優しい包装:生物由来の素材(PLAやサトウキビなど)やリサイクル素材を使用した製品が含まれ、法規制と環境意識の高まりによって推進されている。 

要するに、包装の材料にはプラスチック、金属、ガラス、紙など多種多様な素材が使用されており、最近では環境配慮型素材(リサイクル可能な素材や生分解性素材など)の需要も増加している。 

包装業界の市場動向 

ベトナムの包装市場は、東南アジア地域で最も急成長している産業の一つとして評価される。以下は具体的なデータである: 

紙包装市場:Mordor Intelligenceによると、市場規模は2024年には26億米ドルに達し、2029年には41.4億米ドルに増加する見込みで、年間成長率(CAGR)は9.73%となる。 
プラスチック包装市場:Vietnam Briefingによると、2023年の生産量は1007万トンで、2028年には1509万トンに増加する予測で、CAGRは8.44%だ。 

成長を促進する要因には次のようなものがある: 

電子商取引の急成長:電子商取引が年間25%以上の成長を遂げており、ベトナムは東南アジアで最も成長の速いオンライン小売市場の一つとなる。これにより、特に食品の配送やオンライン小売の分野で、軽量で持続可能な紙段ボール包装や梱包ソリューションへの需要が急増する。 

国際経済統合:EVFTA、CPTPP、RCEPなどの自由貿易協定は、ベトナムの包装産業が国際市場にアクセスする際に優遇税率を享受できることを助け、特に日本、EU、米国への輸出において有利な立場を提供する。 

グリーン消費傾向:Nielsenの調査によると、86%のベトナム消費者が環境に優しい包装が施された製品には追加料金を支払う準備があるとする。これにより、企業はリサイクル可能または生分解性の包装を生産する方向にシフトする。 

厳格な法規制:2022年1月10日に発効した08/2022/NĐ-CP号令により、2024年から、製造業者および輸入業者は包装材のリサイクル責任を負い、2030年までに使い捨てプラスチックの製造を停止するという予定がある。この規制は大きな圧力を生み出すが、先進的な技術を有する企業にとっては新たな機会を提供する。 

しかしながら、ベトナムの包装業界は、輸入原料への依存(プラスチックと紙の80〜90%)、石油価格の変動による生産コストの増加、外国企業との競争などの課題にも直面している。 

包装業界のM&A動向 

ベトナムの包装業界におけるM&A(合併・買収)活動は、企業が競争力を高め、新しい技術にアクセスする方法として、これまで以上に活発になっている。Vietnam Reportによると、M&Aのトレンドは以下のように集中している1: 

生産能力の強化:外国企業が地元企業を買収することで、既存のインフラを活用し、規模を拡大する。 

技術の移転:日本企業は、QRコードやRFID(無線識別)を統合したスマート包装ソリューションや、バイオ素材(生物由来の素材)を提供し、ベトナム企業が国際基準を満たす手助けをしている。 

国内市場への進出:国内消費の需要が高まる中、M&Aは外国企業がベトナムで販売網を迅速に構築する最も速い方法となる。 

包装業界のM&A事例 

Meiwa Pax Saigon Trapaco 

2018年、Meiwa Paxは、日本からの先進的な包装ソリューションを提供する企業で、ベトナムの大手包装企業であるSaigon Trapacoを買収する取引を実施した。この取引における総投資額は15,39 Mil USDに達した。この取引により、Meiwa Paxはベトナム市場での生産能力を拡大し、市場シェアを増加させ、東南アジア地域におけるプラスチックおよび紙の包装生産の品質と効率を向上させることができた。 

Link: https://www.fact-link.com.vn/mem_home.php?id=00000006&page=00000075&lang=vn 

Bandai Namco Group Artpresto Vietnam Co., Ltd 

Link:https://vietnamnews.vn/economy/505376/work-starts-on-japanese-packaging-factory-in-ha-nam.html 

2019年、Bandai Namco Group傘下のArtpresto Vietnam Co., Ltdは、ハナム省のチョウソン工業団地に包装工場を設立した。総投資額は5 Mil USDで、この工場は年間約4000万個の包装製品を生産する能力を持ち、日本とベトナム市場向けの高品質な供給チェーンに貢献する。これは、バンダイナムコの東南アジアでの成長戦略において重要な一歩となる。2 

包装業界のM&Aのメリット 

M&Aは、特に日本とベトナムの企業間で協力する際に、包装業界の企業に多くの戦略的利益をもたらす。以下はその利点だ: 

先進技術へのアクセス:日本はスマート包装技術や持続可能な素材(生分解性プラスチックPLAやリサイクルPET包装)の分野で世界をリードしている。M&Aを通じて、ベトナム企業は生産ラインのアップグレードを行い、国際的な環境基準に対応できるようになる。 

市場の拡大:日本企業は、ベトナムでの顧客ネットワークと製造施設を活用して、東南アジア市場にさらに深く進出できる一方、ベトナム企業は日本や先進国向けの輸出チャンネルから利益を得ることができる。 

コストの最適化:地元企業の買収により、新しい工場の建設に比べて初期投資コストを削減でき、既存の人材や資源を活用できる。 

法規制への対応:ベトナムの厳格なリサイクルや使い捨てプラスチックに関する規制に対し、日本企業とのM&Aは、環境に優しい包装の生産経験を活用して、法規制に対応し、ブランドの信頼性を高める助けとなる。 

包装業界のM&Aの流れ 

ベトナムの包装業界におけるM&Aのプロセスは、通常、以下のステップで進行する: 

市場調査:規模、生産能力、顧客リスト、地理的位置などに基づいて、潜在的なパートナーを特定する。
企業評価:ターゲット企業の財務、法務、技術を評価し、実際の価値と協力可能性を確認する。 
交渉と契約締結:両者が取引額、所有権割合、協力条項に合意する。 
統合の実行:M&Aが完了した後、技術移転、生産プロセスの最適化、共通のビジネス戦略の構築を進める。
効果測定:M&A後の成果を売上、マーケットシェア、顧客満足度などの指標を通じて評価する。 

さいごに 

ベトナムの包装業界は、経済統合とグリーン消費の成長により、強力な発展の機会を迎えている一方で、法規制や国際的な競争という課題にも直面している。日本の企業にとって、M&Aは市場に迅速に参入するための最短ルートであり、技術力を活かして双方に持続可能な価値をもたらす方法でもある。ベトナムの内在的な可能性と日本の経験を組み合わせることで、包装業界はグローバルなサプライチェーンの重要な柱となり、よりグリーンな未来を築く貢献ができる。