M&Aを活用した医療・製薬業界進出:市場の魅力と成功のポイント 

はじめに 

ベトナムの医療・製薬業界は、急速な経済発展と生活水準の向上を背景に、外資企業にとって有望な成長市場として注目を集めている。 

同国の医療市場は医療需要の増加に伴い、規模の拡大が続いており、特にがん治療などの革新的医薬品の分野は今後の成長の柱と見なされている。 

また、医療制度の拡充が進む中、国内外の投資が活発化しており、外資企業にとっては新たな事業機会の獲得が期待できる市場である。 

ただし、参入にあたっては医療関連規制の遵守や現地特有の流通網への対応が求められるため、現地企業との協業やM&Aの活用が重要なポイントとなる。 

ベトナムの医療業界の成長性と魅力 

ベトナムの医療業界は、急速な経済成長とともに市場拡大が進んでおり、今後も大きな成長が見込まれている。 

同国の医薬品市場は年平均成長率(CAGR)10~12%を記録しており、通常予測においても2027年までに65億ドルの市場規模に達すると予測されている。 

また、楽観予測では87億~276億ドルの市場規模に達する可能性があり、特にがん治療薬などの革新的医薬品市場が注目されている​。 

医療費の対GDP比を見ると、ベトナムは5.9%とASEAN周辺国の中で最も高く、政府および民間による医療支出が拡大している。 

さらに、入院患者数および外来患者数は増加傾向にあり、医薬品の需要が今後も増加することが見込まれている。 

このような成長背景により、ベトナム市場は日本の医療関連企業にとって魅力的な投資先である。 

医療制度の拡充とともに、既存市場に加え、新たな市場機会も獲得できるため、現地企業とのM&Aを通じた迅速な市場参入は大きなビジネスチャンスとなる。 

ベトナムの医療業界におけるM&Aによる市場参入のメリット 

ベトナムの医療市場は急速な成長を遂げており、外資企業にとって魅力的な進出先となっている。 

しかし、新規参入には医療規制の把握やネットワーク構築など多くの時間とリソースを要するため、M&Aによる進出は迅速な市場参入を実現する有効な手段である。 

M&Aを活用することで、既存の医療施設や製薬企業のインフラ、流通網、顧客基盤をそのまま活用でき、事業立ち上げ期間を大幅に短縮できる点が大きなメリットである。 

また、現地企業が持つ規制対応のノウハウや市場情報を活かすことで、薬事認可取得や政府対応といったプロセスをスムーズに進められる。 

さらに、ベトナム市場では政府が国内製薬産業の育成を図っており、既存企業との連携が成長戦略において不可欠となっている。 

M&Aを通じて現地の信頼を得ることで、競争優位性を確保し、急拡大する市場でのシェア獲得が期待できる。 

以上のように、M&Aは市場参入スピードを高め、事業拡大を効率的に進めるための有力な選択肢である。 

ベトナム医療・製薬市場における外資規制の現状 

ベトナムにおいて外資企業が医薬品関連事業を展開するためには、国内企業と同様に法規制を遵守し、「薬事許可証」を取得する必要がある。 

製造事業については投資法に基づき100%外資出資が認められており、実際に日本企業を含む外資企業の参入実績がある。 

しかし、製造に必要な原料の多くを現地で調達することは難しく、多くの場合、輸入に依存している。 

未登録の原料を使用する場合は、別途輸入許可証の取得が求められる点にも留意が必要である。 

一方、2009年以降、外資企業に輸入権は認められているものの、流通権は依然として認められていないため、外資100%の製造会社が自社で直接流通させることは法的にできない。 

そのため、製造した商品は流通機能を持つ現地企業に販売する必要がある。 

しかし、実際には規制の運用に曖昧な部分があり、外資企業が現地企業に出資する形で製造から販売まで関与するケースも増加している。 

外資企業は資金力や技術力を有しているものの、ベトナム市場特有の流通網や顧客ネットワークにおいては競争力が劣ることが多く、これを補うため現地企業との協業が重要である。 

特に内需市場をターゲットとする場合、現地企業への出資や提携を通じて流通網を確保する戦略が効果的である。 

ただし、直接的な資本参画が難しい場合もあり、こうした場合には市場環境を熟知した専門コンサルタントの支援が不可欠である。 

適切な支援を受けることで、規制への対応と現地企業との連携をスムーズに進め、事業拡大の機会を得ることが可能となる。 

医療業界における代表的なM&A事例 

大正製薬によるハウザン製薬(DHG社)買収事例 

大正製薬が2019年に実施したハウザン製薬(Duoc Hau Giang Pharmaceutical JSC、DHG社)の買収は、日本企業によるベトナム製薬市場参入の代表的なM&A事例である。 

2019年3月18日、大正製薬はDHG社の株式公開買付けを開始し、同年4月18日までに発行済株式総数の50.78%を取得した。 

その後、追加取得により最終的に51.01%の株式を保有することとなった。 

DHG社は1974年に設立され、医薬品の生産・販売や医療機器の輸入、健康食品の輸出など幅広い事業を展開している。 

特に抗菌薬や鎮痛剤などが主力製品であり、国内製薬業界では26年連続で国内企業として首位を維持している。 

この買収により、大正製薬は成長市場であるベトナムでの事業基盤を強化し、アジア地域を欧米市場に並ぶ成長の柱と位置付けた。 

また、ハウザン製薬が持つ高い市場シェアや有力ブランド「Hapacol」を自社の製品ラインナップに加えることで、ポートフォリオの充実化を図った。 

両社の強みを結集することで、アジア市場全体での競争力向上が期待されている。 

このM&Aは、日本企業がベトナム市場において成長戦略を推進する象徴的な成功事例である。 

代表的な製薬企業 

会社名:PYMEPHARCO (ピメファコ製薬 (PME) )

設立:1989年 

住所:Phu Yen(フーエン省) 

HPhttps://www.pymepharco.com/ 

企業概要: 
ピメファコ製薬(旧称Phu Yen Pharmaceutical and Medical Supplies国営会社)は、1989年7月に設立された。 
ピメファコ製薬の主な事業は、抗菌薬と解熱剤を主な製品とする医薬品、薬草の製造である。 
2006年、政府はピメファコ製薬の株式を売却し、民間化した後、社名をPymepharco Joint Stock Companyに変更した。 
現在、オランダの製薬会社であるStada Service Holding B.V.が大株主であり、ピメファコ製薬の発行済み株式の89.53%を保有している。 

ベトナムの医療・製薬業界におけるM&Aの課題 

ベトナムの医療・製薬市場は成長が著しい一方で、M&Aには特有の課題とリスクが伴う。 

特に医療・製薬業界では、法規制や認可プロセスが複雑であり、現地市場での経験が不足している場合、事業開始が遅延するリスクがある。 

薬事承認や輸入許可の取得に必要な手続きが不透明な場合もあり、計画の見直しを迫られるケースも少なくない。 

また、買収後の統合(PMI:Post Merger Integration)においても、現地企業の経営スタイルや労働文化の違いが障壁となり、統合が円滑に進まないこともある。 

特に、医療専門職や研究開発チームなど、優秀な人材の流出は業績に大きな影響を与える要因となる。 

さらに、設備の老朽化や生産プロセスの品質が想定よりも低い場合、追加投資が必要になることもあり、初期コストが増大するリスクも存在する。 

これらのリスクを最小限に抑え、M&Aを成功に導くためには、買収前のデューデリジェンスを徹底し、統合計画を慎重に策定することが不可欠である。 

とりわけ、現地市場に精通した優良企業との提携は、法規制対応や市場参入における障壁を取り除き、スムーズな統合を実現する上で重要なポイントとなる。 

経験豊富なパートナーを活用することで、リスクを回避し、成長戦略を確実なものにすることができる。 

さいごに 

ベトナムの医療・製薬市場は大きな成長ポテンシャルを持つ一方で、外資企業には規制や市場特有の課題を克服するための現地戦略が求められる。 

弊社は、ベトナム市場に精通し、法規制対応や優良企業の選定、デューデリジェンスの実施から統合支援まで、一貫したM&Aアドバイザリーを提供している。 

豊富な実績を基に、迅速かつ確実な市場参入を支援し、日本企業が現地で競争優位を築くための最適なプランの提案が可能であるため、弊社のサポートにより、ベトナム市場での事業成功をぜひ実現していただきたい。